浜で

美緒 (その五郎の掌を振り払つて)いゝのよ! ホントに浜へでも散歩に行つて! ね!五郎 行けと言やあ行くけど、……なにをそんなに気を立てるんだ。どうしたんだ?美緒 どうもしない! 気分が悪いんぢや無いの。だからさ!……(泣き出してしまふ)五郎 ……? (不安さうに、どうしていゝかわからず美緒を見詰めてゐる。赤井夫妻も心配さうに美緒を見守つて困つてゐる)

[#5字下げ]4 浜で[#「4 浜で」は中見出し]

[#ここから2字下げ]2と同じ場所。砂丘の上にも、波打際にも人影は見えない。砂丘の中腹の草の上に、比企の脱ぎ捨てた浴衣が置いてある。その上の草の中から聞えて来るアルトの Torna A Surriento(G. B. de. Curtis)「ソレントへ帰れ」唄声はその辺一体に流れ漂うてゐる。京子が砂丘に寝て歌つてゐるのである。草にかくれて姿は見えない。歌は二度繰返へされる。その二度目の真中あたりで、利男が水着姿で、街道の方からスタスタやつて来る。唄声に近づくに従つて足音を忍ばせるやうにして、砂丘の下で立停り、ジツと唄を聞いてゐる。唄が終る。[#ここで字下げ終わり]

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