僕の姉の亭主

京子 ……私が? へえ、さう。さうかしら?利男 あの人は、僕の姉の亭主ですがね、今僕が言つてゐるのは、自分の姉の味方をして、なんか心配になつたりして言つてゐるんぢや無いんですよ。……僕、自分の気持から言つてゐるんです。自分でそいつを知りたいからなんですよ。京子 ……さうね、さう、嫌ひぢや無いわね。でもなんか、あぶない様な気もするわね。それに何だかあの方は古いわ。もつとも、私は古いと言ふ事自体は好きだけど……。利男 ……実はさつきも其処まで来てあなたの歌を聞いてゐながら、もしかすると、あなたは歌を唄ひながら久我さんの出て来るのを待つてゐるんぢやないかと言ふ気がチラツとしたんですよ。いや、こりや僕のチヨツトした空想だから当らないかも知れません。多分当つてゐないでせう。京子 当つてゐるかも知れなくつてよ。フフフ。とにかく、今此処に五郎さんがヒヨツコリやつて来ると、なんだか面白いわね。……利男さん、私がね、あなたのお嫁さんになりたいと言つたら、あなた、どうなさる?利男 えゝ? そ、そ、そんな――。京子 私、本気で言つてゐるのかも知れなくつてよ。ホント! どうなさる? 貰つて下さる?利男 そ、そ、それホントですか? ホントなら、僕あ――。京子 ホホホホ。フフ……だからさ。どうなさるのよ?[#ここから2字下げ] この時、出しぬけに砂丘の向うから五郎が出て来る。酔つた顔に何か戸惑ひした様な表情を浮べて、家の方角を振り返り振り返りしながら、ボンヤリしてゐて、此処の二人が居る事など全く知らずにゐる。 足音で京子が振り返り、次に利男が五郎を見る。[#ここで字下げ終わり]

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